介護施設で働く看護師は、病院看護師と比較すると、おむつ、シーツの取り換え、食事・入浴の介助など生活支援業務が多くなります。
介護施設では看護師の在籍が義務づけられており、利用者の健康チェックは大切な仕事です。
介護施設は大きく分けると、以下の5つに分類できます。
①介護老人福祉施設(特養)
②介護老人保健施設(老健)
③介護療養型医療施設(療養病床)(※)
④有料老人ホーム
⑤デイサービス
施設によって、主な利用者の要介護度の違いや業務内容の違いがあるので、転職する前にそれぞれの施設の特徴を知っておく必要があります。
認知症を患う利用者も多いため、利用者だけでなく家族との連絡、アドバイス、メンタルケアも必要です。
したがって、忍耐強さやコミュニケーション能力も必要になります。
※ ③介護療養型医療施設(療養病床)は、2024年3月末に完全廃止され、介護医療院へ移行します。
介護医療院とは、『要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設』です。(参考:厚生労働省『介護医療院公式サイト』より)
介護施設の業務と特徴
介護施設で働く看護師からみた業務と特徴を表にまとめています。
介護施設の業務
①特養 | ②老健 | ③療養病床 | ④有料老人 | ⑤デイ | |
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健康管理 | |||||
服薬管理 | |||||
申し送り | |||||
緊急対応 | |||||
夜間巡視 | |||||
医療措置 | |||||
打ち合わせ | |||||
ドクター報告 |
◎=多い、○=普通、△=少ない、×=なし
介護施設の特徴
①特養 | ②老健 | ③療養病床 | ④有料老人 | ⑤デイ | |
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運営母体 | 都道府県 社会福祉法人 | 都道府県 社会福祉法人 医療法人 | 医療法人 | 株式会社 社会福祉法人 | 株式会社 社会福祉法人 |
仕事内容 | 健康管理 介護度高め | 医療措置多 | 医療措置多 | 健康管理 サービス接遇 | 健康管理 介護度低め |
体制 | 看・介 | 医師常駐 | 医療機関 | 看・介 | 看・介 |
看護職員配置 | 3/100 | 9/100 | 1/6 | 3/100 | 1人以上 |
働き方 (基本) | 日勤のみ オンコール有 | 夜勤あり | 夜勤あり | 日勤のみ | 日勤のみ |
休日 | シフト | シフト | シフト | シフト | 日曜休 |
給与 | 23~34 | 27~38 | – | 25~36 | 20~32 |
「介護度+医療措置の必要度」のみでみると、仕事の厳しさは、特養・療養病床 > 老健 > 有料老人ホーム > デイサービスとなります。実際には、施設によって格差があるので、あくまでも傾向の話です。
①特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は介護老人福祉施設とも呼ばれています。
65歳以上で要介護3以上の認定を受けている方が入居する施設です。
常に介護が必要な比較的重度の方、緊急性の高い方が優先的に入居することができます。
また高齢者が最期まで過ごすことができるのも特徴です。
「重度な介護が必要な高齢者の人生の最期をサポートする施設」です。
②介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、略して「老健」と呼ばれることもあります。
「介護老人保健施設」は、介護やリハビリなどを提供して在宅復帰を目指す施設です。
入院治療と在宅療養の架け橋のような存在といえます。
「要介護度が低めの高齢者が在宅療養へ移るのをサポートする施設」です。
③介護療養型医療施設(療養病床)
「介護療養型医療施設」は、医療と介護両方の支援が必要な高齢者が入院できる病院や診療所のことです。
急性疾患からの回復期にある寝たきり患者を受け入れる施設で、介護療養型医療施設では、長期的に日常的医療ケアやリハビリ、介護などを受けることができます。
介護療養型医療施設は老人保健施設への転換が進み、2024年3月末の廃止予定です。
特養と老健は介護施設(老人福祉法と介護保険法)ですが、療養病床は病院(医療法と介護保険法)。
老健より医療ケアが手厚く、「医療ニーズが非常に高い入居者をサポートする施設」といえます。
④有料老人ホームなどの特定施設入居者生活介護
「有料老人ホーム」は、利用者が可能な限り自立した生活を送れるように、食事や入浴などの日常生活をサポートしたり、リハビリを行ったりする施設です。
有料老人ホームは、正式には「特定施設入居者生活介護」という施設に分類されています。
「予防から重度介護が必要な高齢者まで幅広くサポートする施設」です。
⑤デイサービス
デイサービス( 通所介護)は自宅療養の高齢者に対し、食事・入浴・リハビリを行う施設です。
基本、朝から夕方までの日帰りになります。
利用者は介護度の低い人が多く、ほかの施設に比べると死に直面する機会が少ないです。
要介護とは?
要介護度は数値が高いほど介護の必要性が高くなっており、施設によってその対象者の割合が異なります。
要介護度の目安は以下の通りです。
・要支援1
基本的な日常生活能力はあるが、介護予防や入浴などの一部介助が必要な状態
・要支援2
歩行が不安定などにより、生活の一部で部分的な介護が必要な状態
“要支援”の状態で介護施設に入るケースは少ないです。
介護施設の入居者のほとんどは、次に説明する要介護1以上に該当します。
・要介護1
要支援2と同程度の介護が必要で、認知症の可能性や半年以内に大きな状態変化がある可能性が認められる状態
・要介護2
自力での起き上がりが困難で、排泄や入浴などで部分的に介助が必要なため、軽度の介護が必要な状態
・要介護3
自力での起き上がりや寝返りが困難で、排泄や入浴などで全面的な介助が必要なため、中度の介護が必要な状態
・要介護4
排泄・入浴・着替えなど多くの行為において全面的な介助が必要なため、重度の介護が必要な状態
・要介護5
生活の全てにおいて全面的な介助が必要なため、最重度の介護が必要な状態
(参考:厚生労働省老人保健課『要介護認定の仕組みと手順』)
要介護の数値の違いによって、対象者の状態がかなり異なります。
たとえば、要介護1ならサポートがあれば自分で動くことができますが、要介護3以上の場合は介護のサポートなしでは生活がままならない状況です。
また要介護が高いほど認知症が入っている割合は高くなります。
介護施設で働く看護師の体験談
有料老人ホームへの転職
(ジュンさん、40歳後半・女性)
【簡単な自己紹介】
神戸市にある有料老人ホームに、看護師として働いています。常勤で2交代制です。
年収は約500万円です。
仕事以外の日は家事をしたり、趣味の野菜作りをしています。
【看護師になった理由】
子供の頃に入院したときに、親切にしてもらい憧れるようになりました。
【転職回数】
5回です。
【転職の理由】
先輩からのいじめ、上司との意見の不一致、仕事がハード等
【理想の看護師像】
今までは病院に勤務していたので、患者さんが少しでも早く退院できるように、援助してたり、精神面で支えたりしていましたが、今は、老人ホームに勤務しています。
入居者様がついのすみかとして選んだ場所を、どのように快適に過ごせて貰えるかを考えながら働いています。
【転職活動で学んだこと】
経験から得たもの:面接などに訪問する前には、事前に転職会社からアドバイスをもらったり、自己にて調べて行きました。
面接で緊張して自分の思っていたことの半分しか答えられないことも多々ありましたので、面接のシミュレーションは必要かなと思います。
また、身だしなみは大変重要だと思います。
面接の内容が良くても、身だしなみが悪いと、そこで落とされてしまいます。
髪の毛、化粧等には充分注意が必要だと思います。
【介護施設に転職する後輩へのアドバイス】
大したことは言えませんが、経験は必要です。
豊富な知識も必要になってきます。
病院で経験したことが、今の老人ホームの仕事でも大いに助かっていることは確かです。
病院と仕組みが全く違い、健康な人に対応しますので、病態や内服の事など様々な業務に対応していかなければなりません。
看護師の働く場所は病院だけと思っていた私ですが、色んな所で活躍出来ます。
その為にも経験と豊富な知識を持って働く場所を選択していけばいいとおもいます。
病院・クリニックなどでしか働いたことのない、介護施設で働く看護師必携の書。
看護職員が介護施設で介護職員など他職種と協働しながら働く際に、効果的にケアを提供するための実践ガイド本です。
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